TALK SALON

スマートイルミネーションを新しいまちづくりの場とするトークサロンがスタート

今年5度目の開催となるスマートイルミネーション横浜は、秋の開催に向けて今後のイベント運営の方針を、市民、地元企業、主催者と様々な立場を超えてつくりあげていきたいと、トークサロンをスタートさせた。誰もが参加できる「気軽な対話の場」を創出したいとするトークサロンは、今年度初の取り組みである。月に1度程度、対話の場を設けながら様々なアイディアを交換したり、省エネの先端技術を持つ企業とアーティストのマッチングの場ともなっている。

5月22日に開催された“プレ”トークサロンでは、「スマートイルミネーションのこれから」とテーマが設定され、スマートイルミネーションの歴史や、これまでに制作されてきた作品の紹介に加え、世界の各都市で開催されているイルミネーションイベントなどが紹介された。

もともと、スマートイルミネーションは象の鼻テラスを運営する株式会社ワコールアートセンター(東京・青山にある複合文化施設スパイラルの運営会社)の単独事業であった。2009年に同社が象の鼻テラスの運営を任された際に、象の鼻テラスを拠点とする大型のアートプロジェクトを開発したいと、当初は光りの祭典の開催を目指してパイロット事業を展開していたのが始まりである。いよいよ2011年に本格的なイベント開催を、と、準備を進めていた同年3月に東日本大震災が発生。これがきっかけとなり、今後は街の中のエネルギー技術をもっと省エネにしていくことが大切になってくるのではと未来を見据え、「省エネルギー技術とアートの融合」という基本コンセプト打ち出し、「スマートイルミネーション横浜」がスタートした。2011年の取り組みが評価され、2012年度からは横浜市の参画を得て実行委員会形式に移行。以来、参加型のプログラムを増設したり、象の鼻テラス周辺のみならず、横浜市内の4つの区に展開したりと、成長を続け、昨年は総来場者数20万人を数えた。

2010年のプレ事業から継続参加をしているアーティストの髙橋匡太さんは、作家サン=テグジュペリの『人間の土地』から「あの灯火のひとつひとつが見渡す限り一面の、大海原の中にもなお、人間の心という奇跡が存在することを示していた」という一説を引用し、ひとつひとつの灯りに人間の暮らしがあると感じれば、光りの見え方が変わると、「今後も街の見え方や見方が変わっていような作品を作り続けて行きたい」と語り、「皆でつくっていきましょう」と、今秋への意欲を滲ませた。

また、スマーイルミネーション実行委員会の一員でもある信時正人(横浜市温暖化対策統括本部 環境未来都市推進担当理事)は、横浜市が選出されている環境未来都市の構想に触れた。環境未来都市政策とは、世界の各都市が共通して抱えている地球環境と超高齢化という課題に対し、環境・社会・経済を横断的にアプローチすることで、総合的に解決していこうという取り組みである。スマートイルミネーションはその「横断的な」取り組みを既に叶えている実例として、大きな役割を担っており、「日本が強みを持つ技術を、横浜ではアートのクリエイティビティを通じて紹介する。その先駆けがスマーイルミネーション」と語った。

アートの持つクリエイティビティを、省エネ技術のプレゼンテーションに存分に活用し、多くの参加型イベントを設けて街中を舞台に展開することで、市民も観光客も存分に楽しむことができ、かつ、横浜の臨海部の海辺や歴史的建造物を含む夜景の美しさを感じてもらえる。一方で横浜市内の各区でサテライトでも展開されているというスマートイルミネーション。この多くの要素を豊かに絡め合わせたコンセプトは、環境未来都市の取り組みの一端を担うだけではなく、韓国、上海、サンディエゴでも同様のコンセプトでイベントを開催したいと、海外からも注目を集めているそうだ。海外展開に向けた新たな動きにも目が離せない。

同イベントのアートディレクターである岡田勉は、「省エネ技術とアーティストの発想力を掛け合わせ、ダイナミックに街に作用させていくと何が起るのかと、このフェスティバルに思い至った。いつかスマーイルミネーションの時期に人工衛星から横浜の街を見て、日本中がまばゆい光を放つ中、横浜だけが真っ暗という光景を見てみたい」と、省エネ技術が活用された横浜の街の未来を構想している。

こうして関係者が一堂に会し、これまでの総括をする機会は今回が初めてであったということで、実行委員長の国吉直行も「私自身も非常に勉強になり、ヒントを得た。横浜にはいろんな市民の活動がありますし、そういう活動を伝えて行くという意味でも、光りの演出や役割は有効ではないか」と話した。

各方面から期待を集めるスマートイルミネーションであるが、国などの大型の助成金を獲得してきたこれまでの年度よりも実施予算は限られており、積極的にスポンサーを募るなどの方向転換を迫られている。スマートイルミネーションをより持続可能で、世界からもっと注目を集めるイベントに成長させていくために、トークサロンは今後も月に1度、テーマを変えて開催予定だ。スマートイルミネーションを通じて伝えたい技術やアイディアなどの参加を期待している。

実施概要

タイトル プロローグ~スマートイルミネーションのこれから
概要 環境技術とアートを融合する国際アートイベントとして発展してきたスマートイルミネーションの今後の発展の可能性について、これまで携わってきた方々を中心に語り合います。今後続くトークシリーズを前に、スマートイルミネーションの課題やビジョンを共有する場とします。
開催日時 5月22日(金) 
トーク:18:30~20:00
スナック・スマートイルミネーション(交流会):20:00~21:00
会場 象の鼻テラス
パネリスト 国吉直行(スマートイルミネーション横浜実行委員会 委員長)
信時正人(横浜市温暖化対策統括本部 環境未来都市推進担当理事)
髙橋匡太(アーティスト)
岡田勉(スマートイルミネーション横浜 アートディレクター)
進行 守屋慎一郎(スマートイルミネーション横浜 プランナー)
主催 スマートイルミネーション横浜実行委員会

(文・写真:友川綾子)

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